| 媛媛講故事―15 白蛇伝 Ⅰ 何媛媛 ![]() はるか大昔のことです。中国は杭州の、美しい湖で知られた西湖の「断橋」の下には仙界があり、そこで一匹の亀と一匹の白蛇が仙術の修行をしていました。 ある年の春、二匹のもとに団子が一つ、橋から転がり落ちてきました。亀と白蛇はそれを食べよう奪い合いましたが、その団子は結局白蛇が食べてしまいました。 亀は非常に腹を立て白蛇と争いを始めました。亀も白蛇もすでに五百年に亘る修行を続けて来ていましたのでもともとの腕前はほとんど互角でした。しかし、白蛇は団子を食べましたので更に五百年分の修行の力が加わりました。実は、この団子は仙人の呂洞賓(注1)の仙丹だったのです。亀はどうしても白蛇に勝つことが出来ず白蛇に宿怨を持つようになりました。 その後のある朝、西湖の断橋の下から細い白い煙がゆらゆらと舞い上がると間もなく、その煙は白い衣装に身を包んだ美しい女性に変わり岸に上がってきました。白蛇は千年の修行の効果で人間に変わる力を得たのです。白蛇は自らに「白娘子」と名づけ西湖の辺りをそろそろと歩き始めました。 西湖の風景はなんと綺麗なんでしょう。白娘子はその風光明媚な景色に心を奪われ、人間の暮らしにも魅力を感じて仙界に戻る気持ちがなくなりました。加えて白娘子の心の奥深くにはどうしても果たしたいという願い事もあり、しばらくは人間界に留まろうと心を決めました。 実は、白娘子がまだ何も出来ない小さい白蛇だった頃、蛇を捕る人に捕獲されて危うく殺されかけたところを牛飼いの少年に救われたことがありました。修行を積んで人間になることができたら、必ずその少年を探し出して恩返しをしたいと思っていたのです。 南極仙翁(注2)の話では、その少年は西湖の辺にいて清明節に会えるということです。そのような訳で白娘子は西湖のほとりに住むようになりました。 ある日、白娘子が西湖の辺りをそぞろ歩いていると青蛇が売られていました。白娘子はとても可哀想に思い青蛇を買うと自分の家へ連れて帰りました。ところがこの青蛇も本性は妖怪でした。白娘子に救われたことを深く感謝し、人間の姿に変身すると‘小青’と名乗り、白娘子の下女として仕えるようになりました。 清明節の日がきました。白娘子と小青は蘇堤(注3)に沿って歩いていたところ、俄かに雨が降り始めました。二人は雨宿りをしたいとあたりを探しましたがなかなか良い場所が見つからず困っていますと一人の青年が現れ、親切にも傘を貸してくれました。白娘子がその青年の顔をよく見るとなんとこの青年こそがまさに自分が無力だった時に救ってくれた少年ではありませんか。恩返しのチャンスが来たことが白娘子はすぐ分かりました。 明日になったら傘をお返ししたいからと青年にいろいろ尋ねてみますと、青年は許仙という名前で、西湖の近くに一人で暮らしていることが分かりました。 翌日借りた傘を返すとそれをきっかけにして白娘子は小青を供に、回を重ねて許仙と会うようになり、一緒にお茶を飲んだり、西湖の景色を眺めたりしているうちに段々と三人は親しさを深めて行きました。 許仙はなかなかの美男子でありましたので白娘子は遂に許仙に恋するようになりました。 (続く) 注1)呂洞賓:中国道教の代表的な仙人である。八仙の一人である。 注2)南極仙翁:人間の寿命を守る神であり、福、禄、寿の中の一人・寿老人として知られている。 注3)蘇堤:西湖を南北に貫く堤防。西湖の一景として有名である。 ******* 前に戻る TOPへ |
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